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こんにちは!
面白い本を読んだからといって、読みながら明るい気持ちになれるとは限りませんよね。
今回紹介するのは、2026年本屋大賞を受賞した、朝井リョウさんの『イン・ザ・メガチャーチ』です。
読んだ感想を先に言うと、とても面白かったです。ただ、内容はあまり明るい話ではなく、終始なんだか落ち込むような気持ちで読み進めました。
それでも、この作品について書いておきたいと思うのは、それぞれの登場人物に「その気持ちはわかる」と思える部分があったからです。物語を読みながら、自分のことも振り返っていました。
楽しい気分になりたいときに選ぶ本とは、少し違うかもしれません。でも、人の気持ちや、自分自身について考える小説を探している方には、紹介したい一冊です。
今回は、結末や重要な展開のネタバレを避けながら、作品の概要と読んで感じたことを書いていきます。
■『イン・ザ・メガチャーチ』はどんな作品?
『イン・ザ・メガチャーチ』は、朝井リョウさんによる小説で、2025年9月に日本経済新聞出版から刊行されました。
題材になっているのは、「ファンダム経済」です。少し難しそうな言葉ですが、共通の対象を応援するファンの集まりと、そこから生まれる消費や活動を思い浮かべるとわかりやすいと思います。
公式の内容紹介では、アイドルグループの運営に関わる男性、心労を抱える大学生、舞台俳優を応援していた女性という、立場の異なる人物たちが紹介されています。
同じファンの世界でも、運営する側と応援する側では、見えているものが違います。そして、応援する側にも、それぞれの事情があります。
この作品を読む際には、何が起こるかだけでなく、「その人はどういう気持ちでそこにいるのか」に目を向けてみてください。僕にとっては、その部分が自分を振り返るきっかけになりました。
■登場人物の気持ちが、少しずつわかる
読んでいて面白かったのは、それぞれの登場人物に、気持ちがわかる部分があったことです。
一人の人物だけに共感して、ほかの人物には何も感じない、という読み方にはなりませんでした。立場が違う人物にも、それぞれ理解できるところがある。そのため、物語を完全に自分とは無関係な話として読むことができませんでした。
もちろん、気持ちがわかることと、その人の考えや行動すべてに賛成することは、別の話です。
誰かの気持ちを少し理解できたからといって、何もかも肯定する必要はありません。それでも、簡単には切り捨てられなくなる。その間にある感覚が、この本について考えるうえでは大切な気がします。
物語の中の人物を見ているはずなのに、いつの間にか自分の考え方にも目が向く。今回の読書には、そんな時間がありました。
自分ならどの人物に気持ちが近くなるだろう。逆に、どうしても理解しづらいのは誰だろう。同じ本でも、そこは読む人によって違うはずです。
これから読む方は、その違いも楽しんでほしいと思います。
■面白いのに、気分は沈んでいく
ここは、読む前に知っておいてほしいところです。
僕の場合、この作品を読んでいる間、気持ちはあまり明るくなりませんでした。内容が明るい話ではないこともあって、終始なんとなく落ち込みながら読み進めていた感覚があります。
「とても面白かった」と「気持ちが沈んだ」は、今回の感想として、どちらも本当です。
小説の面白さには、いろいろな種類がありますよね。笑えること、胸が熱くなること、先の展開が気になること。そして、人の気持ちに触れながら考え込むことも、その一つなのだと思います。
だから、この本を「面白いからおすすめ」とだけ紹介するのは、少し違う気がしました。気軽に明るい気分になれる作品を期待して読むと、僕のような感想は意外に感じられるかもしれません。
これは、作品が合わなかったという意味ではありません。むしろ、面白さと気分の明るさは別なのだと、分けて伝えたくなる読書でした。

読む時期や、そのときの気分によっても、受け止め方は変わりそうです。今は重い話を読む余裕がないという方なら、少し時間を置いて手に取る選び方もあると思います。
■自分のことを振り返りながら読む
僕はこの本を読みながら、自分自身のことを振り返っていました。
ここからは、その感想を入り口に、読者の方にも考えてみてほしい問いを挙げてみます。以下は作中の具体的な場面の紹介ではなく、作品の題材を日常に引き寄せるための例です。
たとえば、好きなものについて、周りと意見が違ったとき。自分の気持ちをそのまま言えるでしょうか。それとも、場の雰囲気を気にして黙ってしまうでしょうか。
誰かを応援するときも、自分が楽しめる範囲はどこまでなのか、周りの熱量と自分の熱量を分けて考えられるのか。そんな問いがあります。
こうしたことには、簡単に正解をつけられません。人と一緒に楽しむからこそ得られる喜びもあれば、一人ではしなかった選択をすることもあるからです。
誰にも影響されずに生きるのは難しいですし、影響を受けること自体が悪いとも思いません。ただ、自分は何を大切にして、その行動を選んでいるのか。一度考えてみる意味はありそうです。
小説の人物について考える時間を、自分について考える時間にもできる。この作品には、そんな読み方があると思います。
■「推し」がいない人にも、読む入り口はある
ファンダムや推し活が題材と聞くと、「自分には関係がないかな」と思う方もいるかもしれません。
ただ、人が何かを好きになったり、誰かの言葉を信じたりする場面は、ファン活動に限りません。好きなブランド、よく見る発信者、共感する考え方など、身近なところにもあります。
もちろん、これらがすべて同じだということではありません。それでも、「人はどうして心を動かされるのだろう」という入り口なら、特別なファン活動の経験がなくても考えられます。
僕がそれぞれの人物の気持ちに理解できる部分を見つけたように、読む方にも、自分に近い感覚が見つかるかもしれません。
反対に、僕とはまったく違うところが気になる可能性もあります。読む人ごとの違いを聞いてみたくなる題材です。
■こんな方におすすめしたいです
・登場人物の気持ちを考えながら読むのが好きな方
・推し活やファンのコミュニティーに関心がある方
・人が何かを信じ、行動する理由に興味がある方
・小説を通して、自分の考え方も振り返りたい方
一方で、明るく楽しい気分になれる物語を求めている方には、僕自身の読書体験としては、少し慎重にすすめたいです。
本屋大賞の受賞は手に取るきっかけになりますが、大事なのは、今の自分がどんな読書をしたいか。気になる方は公式紹介や試し読みも見ながら選んでみてください。
■まとめ|明るくはなれなかった。でも、とても面白かった
『イン・ザ・メガチャーチ』は、僕にとって、とても面白い一方で、気持ちが沈むような読書でもありました。
それぞれの登場人物に気持ちがわかる部分があり、自分のことを振り返りながら読む。そんな時間を持てたことが、今回伝えたいポイントです。
単純に楽しかったと言い切れなくても、人について考え、自分について考える面白さがある。そういう小説を読みたい方は、ぜひ手に取ってみてください。
読んだ方は、どの人物の気持ちに理解できる部分がありましたか?
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■作品情報の確認先
・本屋大賞公式サイト(2026年受賞作品)
https://www.hontai.or.jp/
・出版社の書籍紹介
https://bookplus.nikkei.com/atcl/catalog/25/07/10/02104/


