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「この土地は、第1種高度地区に指定されています」
マイホームの契約前にこう説明されて、「何か制限があるのはわかったけれど、普通に暮らす私たちに関係あるの?」と思いませんか。
不動産会社が売主や仲介に入って一般の方が住宅を購入するときは、契約前に宅地建物取引士から「重要事項説明」を受けます。その中で、土地にどんな建物を建てられるかを知る手がかりの一つが、**高度地区(こうどちく)**です。
今ある家にそのまま住むなら、高さの計算式まで覚える必要はありません。一方、「いつか親と暮らすために、3階建ての二世帯住宅にしたい」と考えているなら、契約前に確かめておきたい項目です。
まずは、同じ「高さ制限」でも意味が正反対になる、二つのルールから見ていきましょう。
高度地区には「ここまで」と「ここから」がある
高度地区とは、住宅地や商業地などの用途地域の中で、街の環境を守ったり、土地を有効に使ったりするために、建物の高さの上限または下限を決めた地区です。地域ごとのルールは都市計画で定め、建築基準法第58条が、建てるときにそのルールを守るよう求めています。
「最高限度」は、「これより高くしない」という上限です。 住宅街なら、北側のお隣に光が届くよう、境界に近いところほど建物を低く抑えるルールもあります。横浜市では、上限を定める高度地区が第1種から第7種に分かれています。ただし、番号と制限の内容は全国共通ではありません。別の市で聞いた「第1種」の説明が、そのまま当てはまるとは限らないのです。
「最低限度」は、反対に「これより低くしない」という下限です。 たとえば横浜市の「最低限第3種高度地区」では、対象となる建物の各部分について、原則7m以上と定めています。玄関ポーチなどの例外はありますが、「屋根の一番高いところが7mに届けばよい」という意味ではありません。

なぜ、わざわざ建物を高くするの?
意外な理由の一つが、火災から街を守るためです。横浜市の防災計画では、主要な道路沿いで最低限高度地区と防火地域を組み合わせています。一定の高さのある、燃えにくい建物が道路沿いに並ぶことで、火が周囲に広がりにくくなる効果を期待しているのです。
一方、「道路沿いの建物で車の音を遮る」という街づくりも実際にあります。たとえば東京の環状七号線沿いの一部では、沿道地区計画という別の制度で、建物の高さだけでなく、道路に面する幅や、音を通しにくい構造も定めています。道路沿いに高さの下限があっても、それだけで「騒音対策のため」とは判断できないわけです。
高さ10mまでなら、3階建てにできる?
「10mまで」は「2階まで」という意味ではありません。反対に、「10mに収めれば必ず3階建てにできる」という意味でもありません。 ポイントは、家の一番高いところだけでなく、屋根や外壁の位置によって、許される高さが違う場合があることです。
横浜市の「最高限第1種高度地区」を例にしましょう。建物全体の高さは原則10mまでですが、北側の境界から斜めに引いた線より上に、屋根や外壁が出ないようにする決まりもあります。たとえば北側が同じ高さの宅地で、緩和などがない場合、真北の敷地境界から水平に2m離れた位置では、この線の高さは6.2mです。敷地のどこでも10mまで建てられるわけではない、とイメージできますね。
そのため、北側の屋根を低くしたり、3階の部屋を南側に寄せたりすると、取れる間取りが変わってきます。将来二世帯で暮らしたい方にとって、本当に知りたいのは「3階が少しでも造れるか」ではなく、**「家族に必要な部屋が、必要な広さで取れるか」**ではないでしょうか。
買う家と、これからの暮らし方で確認ポイントは変わる

新築の建売住宅に、そのまま住む場合
完成した2階建てが気に入っていて、増築や建て替えの予定もない。そんな方は、高度地区の種類を暗記するより、内見でその家のどこを気に入ったかを思い出してみてください。
たとえば「南側が駐車場だから、リビングが明るい」という家。ここで役に立つ質問は、**「南側の駐車場にも、この家と同じ高さ制限がかかっていますか?」**です。
自分の敷地とお向かいでは、指定が違うこともあります。将来そこに何が建つかまではわかりませんが、自宅の重要事項説明書だけで「この日当たりはずっと変わらない」と考えるより、周辺の土地で何が可能なのかを知っておく方が参考になります。
中古戸建てを買って建て替える場合
ここで覚えておきたいのは、「今ここに建っている」と「今から同じ家を建てられる」は別の話ということです。
建てた当時は適法でも、後からルールが変わり、今の基準には合わなくなった建物があります。これを「既存不適格」といいます。もともと違反して建てたという意味ではありません。ただし、解体して新しく建てるときは、原則として建て替え時点のルールで計画します。今と同じ高さや広さに戻せるとは限りません。
古い家を解体して新築するつもりなら、契約前に、不動産会社から敷地の寸法や方角がわかる図面をもらいましょう。 そして建築士には、「3階建ては可能ですか?」だけでなく、二世帯住宅なら「親の寝室と水回りは1階に」、賃貸併用住宅なら「1階に貸せる部屋を一つ」と伝えてみてください。高さに加え、敷地に対してどれだけの床面積を建てられるかを決める「容積率」や、前面道路による制限も踏まえて、希望の間取りが収まるかを検討できます。

分譲マンションの一室を買う場合
自分の部屋に住むうえで、建物全体の高さを日々意識することはないでしょう。ただし、マンション全体を建て替える場面では話が変わります。現在の高さ制限や容積率によっては、今と同じ規模に戻せないこともあります。また、建て替えは一人では決められません。
築年数が経ち、すでに建て替えの話が出ている物件なら、「いつか建て替えるらしい」という話だけで判断せず、管理組合の総会議事録などで、どこまで検討されているかを確かめておきたいところです。
まとめ|重要事項説明では「この土地で何をしたいか」を伝えよう
高度地区の説明で大切なのは、「第何種か」を覚えることより、**「自分が気に入った住環境や、将来かなえたい暮らしに、どんな影響があるか」**を知ることです。横浜市の物件なら、市の地図サービス「i-マッピー」で、自宅だけでなく周辺の土地の指定も調べられます。
日当たりが購入の決め手なら、「南側の空き地にも、同じ高さ制限がありますか?」
将来の二世帯同居が購入の条件なら、「今のルールで、親の部屋を1階に置いた3階建てが入るか、契約前に図面で確認できますか?」
専門用語を使う必要はありません。内見で気に入ったことや、将来かなえたいことを、そのまま担当者に話してみてください。

